Side by side. 1



「 それでは、失礼致します。 おやすみなさいませ。 」


一日の終りに 御身の側を辞する時、
いつもなら、我が主君は 微笑んでいるはずだった。
それが、今日はどうだろう。
扉が閉まる隙間ごしに 見える背中はうなだれていた。


「  お疲れのご様子でしたね。 」

「 仕方あるまい。 ユーフェミア様と言い争うなど、本意であるはずがないのだ。 」


隣にいる ダールトン将軍も、かすかに眉をひそめている。

ついさっきまで、執政室では 総督と副総督が 珍しく声を荒げていた。
副総督であるユーフェミア様のご決断が、総督の意にそぐわないものだったのだ。 
我が主、コーネリア様・最愛の妹君は 御身を守るための騎士に ナンバーズを指名した。
それも、亡国首相の忘れ形見、という いわくつきの人物を。


「 実際のところ、どうお思いです? 」

「 実力は申し分ないだろうが … 背景に 問題がありすぎる。

  いずれは我らで排除、という可能性も、考えておかねばならんな。 」


マスコミに流れた言葉を 撤回するのは難しい。
副総督の宣言を止められなかった将軍、絶好の話題をタイムリーに報道したメディア、
妹君の目に留まることができなかった あまたの騎士候補者たち。
それらの全てに対して コーネリア様はお怒りになられた。

どれほど怒りをあらわにしても、結局は
ユーフェミア様を許してしまうご自身を、最初から判っておられたのだろう。


「 貴殿にも 余計な苦労をかけるかもしれんが … 頼んだぞ、ギルフォード卿。 」

「 心得ております。 」


自分がどうするかなど、決まっている。

第二皇女の力強い瞳に射抜かれ、乞われるままに手を差し出した、
誓いを述べたあの日から、ずっと 自分はコーネリア様のためだけに、ある。
妹君がうつむくことで コーネリア様の表情が曇ってしまうと言うのなら
その元凶を、未来永劫 取り除くだけのことなのだ。

すべては、コーネリア様のため。
すべてを捧げる、あるじのため。


「 重々、承知しておりますゆえ …  」


例え、真紅の血をあびて、錆びた匂いが消えなくても。



経歴も、背景も そしてその選出方法さえも
何もかもが規定外の、新たに生まれいづる騎士よ。

君は、君には耐えられるか?
自らの言葉を、胸の想いを ただひたすらに押し殺して 
果てしなく続く長い日々を。

黒い謀略の渦巻く世界で、正気を保っていられるか?

その苦しみを背負ってもなお、御身の側に、と誓えるか?



繰り返すばかりの問いかけを、言葉にすることはないだろう。
彼への形をとっていても、それはいつしか自分の胸へと戻ってくる。

そのすべてに ただ、頷くだけだ。
それで お側にいられるのなら。


… Yes, Your Highness . 


声にならない最敬礼は、主の姿を思い出させて 
まるで命の水のように 静かに心を潤していた。







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17話後・捏造 親衛隊編。
↑で 周りのオトナ&ルルの謀略が描かれる中、
騎士姫って、綺麗すぎてつぶされそうな気がしてます;

親衛隊編、姉妹編、騎士姫編、と 進む予定でおります;
ちゃんと出来るかどーかは また、別のハナシなんですが。


'07 Feb. 10 up




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