At the lakeside.



『 全軍に告ぐ!  逃走中のゼロには手を出すな。
ホテルを爆破したヤツのことだ、人質のボートに細工してあるかもしれん。
繰り返す、ゼロには 手を出すな! 』
   

回線ごしにも提督の口調に、苦いものが混ざっているのが判った。

スザク自身も同じような苦々しさを感じている。
モニターの中、遠ざかる船を凝視しながら ただ唇を噛み締めていた。


「 … こんなやり方、間違ってる … ! 」


今回の件に限って言えば、確かに、ゼロの登場は 転機だった。
拉致された人質は解放され、結果的には、丸く納まったように見える。
この場に彼が現れなければ、スザクが救出作戦に呼ばれることもなかっただろう。

それでも ゼロの全てを肯定することは 出来ない。
弱きに手を差し伸べる、と言いながら 人質を逃走の手段に使う、
彼のやり方は ひどくねじれたものに見えた。 

怒りをこめて睨みつけた闇の果てから、視線を外す。
明るく照らされた湖に ボートの点が漂っていた。


「 そうだ、皆は …  」


生徒会の皆は、怪我とかしていないだろうか?

学校で、僕を 受け入れてくれた、大切な仲間たち。
ゼロのことは納得いかずとも、まずは彼らの無事を喜ばなくては …




「 あ … ? 」


湖水に散らばる灯りの中で、やわらかく浮かぶ桃色の髪。
間違えるはずがない、あれは。 一瞬で、すべてを理解した。

総督の消極的な作戦、
どうしてゼロをホテルに通したのかも。
すべては …


「 ユフィ … ! どうしてっ!! 」


彼女がいたなんて、知らなかった。
もしもそれを知っていたなら、きっと もっと …

ここにありつづける、という決意に光をあててくれたひと。 
ルルーシュと過ごせる時間、大切な仲間や 特派での居場所、
すべて、あなたが。

すぐにでも、駆け寄って 直接無事を確かめたい。



一歩 踏み出そうとしたレバーを 動かすことは出来なかった。



親衛隊のナイトメアが 水際にずらりと並んでいた。
先頭で湖水に乗り出しているのは、コーネリア総督の機体だ。

判っている。
僕は、まだ あの場所には 立てない。
固まったままの拳を 改めて ぎゅっと握り締めた。


「 ご無事で何よりです … 皇女殿下  」



ランスロットの白い機体を 見つけたのだろうか。
画面の中のユーフェミアが ふいにこちらへ顔を向け
目があったような気がした。

さえぎるものなど ないかのようだった。
強張っていた表情が みるみるうちに笑顔になる。

花のようなくちびるが、そっと動いて
次の瞬間、提督のナイトメアの影に隠れていた。



ユフィ …  いま … 


柔らかな花びらは、 “ スザク ” と 形をつくっていた。



もう影すら見えないのに、画面から目を離せなかった。
真実を知らないまま、2人で過ごした時間が 色鮮やかに蘇る。


どうしてかは、判らない。
今はもう 姿を見ることもままならない、雲の上の存在に
こんなにも 心を揺さぶられている。


あなたの声を、僕の名前を呼ぶ声を、
いつかまた 聞くことが出来るのだろうか。


握ったままのてのひらが、熱い。
手袋がこすれてきしむ鈍い音が 静かに耳の奥で響いた。




fin.


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8話捏造;
だって、スザユフィ 期待してたのに、ニアミスもなかったんだもん!
すんません、SSは手を出すまい、と思ってたんですがね…;
そんな訳で挿絵はございませんので、悪しからず;;;


'06 Nov. 26 up




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